日本アニメーション学会

日本アニメーション学会第9回大会
開催報告

(2007.11.20/第9回大会実行副委員長・津堅信之

本年度、大阪芸術大学にて開催いたしました「日本アニメーション学会第9回大会」について、概要を報告いたします。

 第9回大会は、第5回大会以来の関西での開催となりましたが、大会テーマも「関西発のアニメーション」とし、関西ならではのアニメーションの現状と展望を発信することとしました。

 大会は、おおむね順調に進められましたが、開催直前になって、プログラムを一部変更せざるを得なくなりました。
 当初、プログラムに盛り込んでいた第1日目の「お楽しみアニメ上映会」が、諸般の事情により実施不可能となったからです。
 しかも、大会開催直前になって中止を決めたため、来場の皆様方には、大会の場において直接そのことをお伝えせざるを得ない状況となってしまい、期待されておられた方々には、ご迷惑をおかけしましたことを、この場をお借りしまして、お詫び申し上げます。
 ただし、変更に伴って、前後のプログラムの持ち時間を延ばし、内容をさらに充実させることによって、できる限りご満足いただけるよう、配慮させていただきました。

 さて、具体的な内容ですが、第1日目の最初のプログラムは、主催校のキャラクター造形学科長で、本大会の名誉実行委員長でもある小池一夫による基調講演「これからのビジネスコンテンツについて」です。
 長年、「キャラクター」が有力なビジネスコンテンツであることをアピールしてきた小池ならではの情熱的な基調講演となりました。

 2つ目は、本大会の目玉プログラムと位置づけた、特別講演「明治期に制作されたと考えられるアニメーションフィルムの発見について」で、講演者は、大阪芸術大学・武蔵野美術大学講師の松本夏樹氏と、大会実行副委員長の津堅です。
 このフィルムは、一昨年、京都で発見されたもので、「関西発のアニメーション」というテーマにふさわしいと考え企画しました。また、このフィルムは、これまでにもいくつかのイベント等で上映されていますが、本学会のような、多くのアニメーション専門家の前で上映される機会は、本大会が初めてとなりました。
 加えて、明治期の幻燈や、大正期の玩具フィルムも上映され、特に玩具フィルムの上映は名調子の弁士つきで、場内は大いに盛り上がりました。

 3つ目は、「関西の産学官のアニメーション関係者による関西アニメーション展望」と題し、アニメーション制作者から行政担当者まで、関西のさまざまな立場による5人のパネラー(岡部望、吉村絵里、鎌田優、杉浦幹男、内海美保の各氏、司会進行は大会実行委員長の遠藤賢治)によって、活発な議論が展開されました。

 第10回総会では、昨年度の活動報告と今年度の活動計画が提案・承認されたほか、会則の一部変更が提案され、これも承認されました。

 そして、夕刻からは恒例の懇親会で、学内のラウンジを会場として行いました。参加人数と比較して、会場がやや狭くなってしまったのが申し訳なかったのですが、参加者の親睦が深められたことと思います。


 第2日目は研究発表です。
 国内外のアニメーションを題材として、かつ、メディア、音楽、心理学、作品研究、教育など、多彩な切り口による研究発表が集まりました。
 

 どの大会でも同じだと思いますが、本大会も、その準備から運営、進行に至るまで、研究室の副手や大学院生などの献身的な働きによって支えられたことを、記しておきたいと思います。
 特に、大会実行副委員長が東京在住という、およそ役立たずの状況を克服し、ほとんどトラブルもなく大会を終えることができたのは、彼らの働きがあったからだと思います。
 その功労をねぎらいつつ、大会の講演者・パネラーとして貴重な話題を提供いただいた方々、そして大会に参加してくださった方々に、厚くお礼申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。

 第9回大会実行副委員長/津堅信之


■参考 大会プログラム

大会テーマ:「関西のアニメーション展望」
会期:2007年6月23日(土)・24日(日)
会場:大阪芸術大学 芸術情報センター
   〒585?8555 大阪府南河内郡河南町東山469

参加費:正会員・海外会員 5,000円
   一般       5,000円
    学生       1,000円 
懇親会費:会員・一般   5,000円
     学生      1,000円

第1日目 6月23日(土) 【講演・シンポジウム】
10:30〜 受付開始(芸術情報センター1階展示ホール前)
11:00〜11:20 開会式:大会名誉会長挨拶、大会名誉実行委員長挨拶
11:20〜12:20 基調講演「これからのビジネスコンテンツについて」
大会名誉実行委員長 小池一夫
13:30〜15:00 特別講演
「明治期に制作されたと考えられるアニメーションフィルムの発見について」
 松本夏樹、津堅信之
15:20〜17:00 シンポジウム
「関西の産学官のアニメーション関係者による関西アニメーション展望」
岡部望、吉村絵里、鎌田優、杉浦幹男、内海美保(司会進行 遠藤賢治)
17:15〜18:15 第10回総会
18:30〜20:00 懇親会(芸術情報センター 地下1階 喫茶ニュー浜口)

第2日目 6月24日(日) 【研究発表】
10:00〜 受付開始(芸術情報センター1階展示ホール前)
10:30〜11:00 「アメリカのカートゥーン映画における自己言及的特質について」 中野泰
11:00〜11:30 「メディアとしてのアニメーションの印象」 土田昌司
11:30〜12:00 「トルンカの長編人形アニメーションにおける音楽の効果」 有吉末充 
12:00〜12:30 「イジー・トルンカのアニメーションの臨床心理学的検討」 横田正夫
13:30〜14:00 「スタジオジブリにおけるデジタル・アニメーションの方法」 朴紀_
14:00〜14:30 「二種類のオバケによる運動誘導力の競合」 吉村浩一・千田明
14:30〜15:00 「ポイント・ライト・ウォーカーによる歩行路面状況の知覚」〜脚への負荷が歩行動作に与える影響およびその知覚について〜 中村浩
15:00〜15:30 「アニメキャラクターの家族構成と物語におけるその心理的役割について」 西岡直美
15:30〜16:00 「フレームと動きの関係」 岡部望
16:00〜16:30 「アニメーションの高等教育の諸問題 −日本における大学教育を中心に−」 小出正志

16:30〜16:40   閉会のご挨拶(大会副委員長 津堅信之)

【作品展示】
会期:2007年6月23日(土)、24日(日) 10:00〜17:00
会場:大阪芸術大学 芸術情報センター1F展示室
主な展示品:
・大阪芸術大学博物館所蔵品
・松本夏樹氏所蔵のアニメーション資料
・大阪芸術大学 学生作品上映

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